【工業熱力学】絶対仕事(膨張仕事)と工業仕事(機関仕事)

絶対仕事(膨張仕事)と工業仕事(機関仕事)

こんにちは、Xenoです!今回は『絶対仕事(膨張仕事)と工業仕事(機関仕事)』について学びましょう。

エネルギー形態の一つである仕事は閉じた系と開いた系でそれぞれ分けて考える必要があります。

そこで登場するのが絶対仕事と工業仕事と呼ばれるものです。

この記事を読めば、絶対仕事と工業仕事の定義とその特徴について理解することができます。

それでは行きましょう!

前回の記事はこちらからどうぞ!

目次

仕事の定義

仕事の定義
仕事の定義

『仕事』とは、物体をある力でどれだけの距離まで移動させたかを表すエネルギー量です。

仕事を\(L[J]\)、力を\(F[N]\)、微小な移動距離を\(dx[m]\)とすると、物体を\(x_1\)から\(x_2\)の位置まで移動させるときの仕事\(L\)は次のように定義されます。

\[L=\int{dL}=\int_1^2{Fdx}=F(x_2-x_1) [J]\]

絶対仕事(膨張仕事)

下図のように質量\(m[kg]\)の作動流体が、ピストンとシリンダーに閉じ込められている状態を考えます。

この作動流体が状態1から状態2に膨張変化したときに、ピストンを介して外界に対して行った仕事\(L_a[J]\)を考えてみましょう。

作動流体の膨張変化
作動流体の膨張変化

まず、ピストンが\(x_1\)の位置から微小距離移動することを考えます。

この微小移動では圧力は変化しないと考えられます。ピストンの面積を\(A[m^2]\)、微小な容積(体積)変化を\(dV[m^3]\)とすると、外界になす微小仕事\(dL_a\)は、

\[dL_a=pAdx=pdV[J]\]

よって、作動流体が状態1から状態2に膨張変化したときに外界に対して行った仕事\(L_a\)は、微小仕事\(dL_a\)を状態1から状態2の範囲で積分すれば求められることになります。

\[L_a=\int{dL_a}=\int_1^2{pdV} [J]\]

下図は圧力\(p\)と容積\(V\)の関係を表したグラフです。

絶対仕事(膨張仕事)
絶対仕事(膨張仕事)

このようなグラフを『pV線図』といいます。

pV線図を見ると、先ほど求めた\(L_a\)は面積ABFEになっていることが分かるでしょう。

この仕事\(L_a\)を『絶対仕事(膨張仕事)』と言います。

開いた系の機関

下図のようなシリンダーに吸気バルブと排気バルブ取り付けられており、そこから作動流体が流入して、流出する状態を考えます。

開いた系の機関
開いた系の機関

この機関は以下の手順に従って動作します。

(0)初期状態

シリンダーに作動流体は入っておらず、ピストンは左端に位置しています。

(1)作動流体の流入

吸気側の弁が開き、圧力\(p_1\)、質量\(m\)の作動流体がシリンダー内に流入し、ピストンを左端から\(x_1\)の距離まで移動させます。

(2)作動流体の状態変化

吸気側の弁が閉じられ、膨張変化によって作動流体が容積\(V_1\)から\(V_2\)まで膨張し、ピストンを\(x_1\)から\(x_2\)の位置まで移動させます。

(3)作動流体の流出

排気側の弁が開かれ、シリンダー内の作動流体がすべて流出し、その過程でピストンが左端へと移動して、初期状態へと戻る。

以上の一連の動作で作動流体がピストンを介して外界に対して行った仕事\(L_t\)について考えてみましょう!

工業仕事(機関仕事)

流入仕事

まず、作動流体がシリンダー内に流入することで行われる流入仕事\(L_{in}[J]\)について考えます。

ピストンは作動流体によって圧力\(p_1\)で距離\(x_1\)移動するので、流入仕事\(L_{in}\)は以下の式で表すことができます。

\[L_{in}=p_1Ax_1=p_1V_1 [J]\]

膨張変化による仕事

次に、状態1から状態2への膨張変化によって絶対仕事\(L_a\)が行われると考えられる。

絶対仕事\(L_a\)は以下の式で表されます。

\[L_a=\int{dL_a}=\int_1^2{pdV} [J]\]

流出仕事

最後に、作動流体がシリンダーから流出することで行われる流出仕事\(L_{out}\)について考えます。

今回は容積\(V_2\)分だけ収縮するため、\(L_{out}\)は負の値をとるはずです。

ピストンが左へ距離\(x_2\)移動するので、流出仕事\(L_{out}\)は以下の式で表されます。

\[L_{out}=-p_2Ax_2=-p_2V_2 [J]\]

工業仕事

以上より、この一連の動作による仕事\(L_t\)は上記の3つの仕事を足し合わせることで求めることができます。

工業仕事(機関仕事)
工業仕事(機関仕事)

上図のpV線図を見ながら\(L_t\)を考えると次のように表されます。

スクロールできます

\[L_t=L_{in}+L_a+L_{out}=p_1V_1+\int_1^2{pdV}-p_2V_2=面積AEOC+面積ABFE-面積BFOD=面積ABDC\]

面積ABDCはpV線図より、以下の式で表すことができます。

\[面積ABDC=\int_2^1Vdp=-\int_1^2Vdp\]

よって求めたい仕事\(L_t\)は次のように求められます。

\[L_t=-\int_1^2Vdp [J]\]

この一連の動作で行われた仕事\(L_t\)を『工業仕事(機関仕事)』といいます。

まとめ

今回は絶対仕事(膨張仕事)と工業仕事(機関仕事)について解説しました。

絶対仕事は今までの延長で理解しやすいと思いますが工業仕事に関しては一回で理解することは難しいでしょう。

そんなときは、もう一度記事を見返してみてくださいね。

次回は『熱力学第一法則(内部エネルギーとエンタルピー)』について解説します。

それでは、また次の記事でお会いしましょう!

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この記事を書いた人

工業高等専門学校を卒業後、
大学の工学部へ編入して現在は大学院生です。
熱流体工学を専攻しています。
これまで学習した知識を活かして、機械工学分野に関わる情報を提供しています。

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