【工業熱力学】工業熱力学の概略(化学熱力学との違いは?)

工業熱力学とは

はじめまして、Xenoです!

今回は工業熱力学のおおまかな概略について学んでいきましょう。

熱力学は高校でも学ぶので馴染み深い方も多いと思います。

しかし、大学などで習う熱力学は高校の時と比べてかなり難しい印象です。

ましてや工業熱力学なんてどう手を付けたらいいか分からないことでしょう。

私は高専(日本全国にある5年制の工業高等専門学校です)出身なのですが、3年生の時に急にこの科目が現れてかなり苦労した思い出があります…。

四力(材料力学、機械力学、熱力学、流体力学の4つの総称です)の中でも結構抽象的に感じる方が多いです。

でも、大丈夫です。当ブログでは一つ一つ分かりやすく解説していきます。

この記事を読めば工業熱力学の概略を理解することができます。

それでは行きましょう!

このブログでは材料力学についても解説しています。良ければご覧ください!

目次

工業熱力学とは何か?

そもそも工業熱力学とは何か?

一文で説明すると、『自然界または人力で得られた熱エネルギーをいかに効率よく動力に変えられるかを問う学問』です。

下図を見て下さい。

熱機関におけるエネルギー変換
熱機関におけるエネルギー変換

図の中心にある『熱機関』とは熱エネルギーで動く機会の総称です。

この熱機関に熱エネルギーを与えると、何パーセントかは動力として変換されますが、残りの熱エネルギーは廃熱として捨てられたり、動力としては利用できないエネルギーに変換されてしまいます。

工業熱力学では、この無駄になってしまうエネルギーをできる限り減らし、動力として使うエネルギーを増やすにはどうすれば良いかを考える学問なのです。

工業熱力学は熱エネルギーをどれだけ効率よく動力に変換できるかを考える学問!

熱力学の始まり

蒸気機関の発明

蒸気機関
蒸気機関

熱エネルギーを動力に変換できるものは昔にもいくつか存在していましたが、どれも熱効率が悪く、とても実用的とは言えない代物でした。

しかし、ジェームズ・ワット(James Watt)の登場により蒸気機関が発明されると、瞬く間に社会に普及し、18世紀には歴史の教科書でもお馴染みの第一次産業革命が起こるほどとなったのです。

熱効率の体系化

その後も蒸気機関などの熱機関の改良は進められてきましたが、それは部品の改良のどにとどまる程度で、学問的に熱効率を上げるヒントを見つけるには至っていませんでした。

ところが、サディー・カルノー(N.L.S.Carnot)によって熱効率について体系化されると、そこから一気に熱力学という学問は急速に発展していくこととなったのです。

ジェームズ・ワットによって蒸気機関が発明され、その後サディー・カルノーによって熱効率が体系化された!

工業熱力学と化学熱力学の違い

工業熱力学と化学熱力学では扱う対象が異なります。一つ一つ見ていきましょう。

工業熱力学

工業熱力学は熱機関などの熱エネルギーの変換効率をより高めることを目的とした学問です。

ほかにも、どれだけのエネルギー損失があるかを考えることもあります。

化学熱力学

化学熱力学では化学反応などでどれだけ熱エネルギーが発生するか、反応がどのような方向で進むのかなどを調べることを目的とした学問です。

その他の熱力学

工業熱力学と化学熱力学以外にも熱力学は存在します。

それは、『統計熱力学』と『情報熱力学』です。統計熱力学は主にミクロな対象を扱う学問で、情報熱力学はマクスウェルの悪魔などが有名です。

さまざまな熱力学
さまざまな熱力学

工業熱力学は熱機関、化学熱力学は化学反応を主に扱う!

主に工業熱力学で扱う機器

自動車のエンジン
自動車のエンジン

工業熱力学で扱う機器は様々ですが、ここでは一例としていくつか紹介しましょう。

エンジン

熱機関の例として真っ先に挙げられるものですが、エンジン一つとっても様々な種類があります。

  • ガソリンエンジン
  • 低速ディーゼルエンジン
  • 中・高速ディーゼルエンジン
  • ジェットエンジン

これらのエンジンは車、船や飛行機などの動力として欠かせないものとなっています。

タービン

タービンとは流体などのエネルギーを回転する力に変えて動力を生み出す装置です。

主な例としては発電所などで利用される『蒸気タービン』などがあります。

冷凍機

冷凍機と聞いて思いつくのはおそらく冷蔵庫やエアコン(エアコンは冷房だけでなく、暖房も行うためヒートポンプとしても扱われる)だと思いますが、実はもう一つ身近な家電があります。

それは除湿器です。

除湿器は湿った空気を冷却機によって冷やすことで意図的に結露を発生させ、乾いた空気を外に排出しているので立派な冷凍機です。

まとめ

近年は電気自動車やハイブリット車などの普及により、工業熱力学を学ぶ意義は薄いのではないかと考える人が一定数いますが、けしてそんなことはありません!

工業熱力学はもはや私たちの生活とは切っても切れない関係です。

最初は戸惑う内容も多いと思いますが、一つ一つ丁寧に解説していくので安心してください。

当ブログを通して工業熱力学に対して理解を深めていきましょう。

次回は『温度と熱平衡(熱力学第0法則)』について解説します。

それでは、また次の記事でお会いしましょう!

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この記事を書いた人

工業高等専門学校を卒業後、
大学の工学部へ編入して現在は大学院生です。
熱流体工学を専攻しています。
これまで学習した知識を活かして、機械工学分野に関わる情報を提供しています。

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