今回は垂直応力とせん断応力について学びましょう。
垂直応力やせん断応力は、材料力学において最も重要と言っても過言ではありません。
しっかりと理解を深めていきましょう!
前回の記事はこちらからどうぞ!

垂直応力
一様な断面積\(A[m^2]\)を持つ部材が、下図のように軸方向に荷重\(F[N]\)を受けているとします。
このとき、部材の伸びは両端周辺を除く断面上で一様に発生するため、仮想断面Sに発生する内力も一様に分布すると考えられます。
この断面に一様に分布する力(単位面積当たりの力)を『応力』といい、軸方向に力を加えることで発生する引張応力や圧縮応力をまとめて『垂直応力』といい、以下の様に定義されます。

\[\sigma=\frac{F}{A} [Pa (N/m^2)]\]
\[\sigma:垂直応力 [Pa (N/m^2)]\]
\[F:荷重 [N] A:断面積 [m^2]\]
単位は\(Pa (N/m^2)\)の記号で表しますが、通常の応力の値は基本的に\(10^6~10^8 [Pa]\)程度の場合が多いため、\(MPa\)(メガパスカル)の記号が使われます。

せん断応力
下図のような部材が壁に固定され、ある位置で軸方向に対して垂直な荷重Fを受けているとします。
固定部と作用線の間での仮想断面Sに発生する応力を調べるためには、断面Sを境に2つに分けて垂直方向の力のつりあいを考えれば良いです。

下図から、運動の第3法則より仮想断面Sには上下方向に断面に沿って力が分布しているのが分かります。
このように、固定面と作用面に対して滑らせようとする力を『せん断力』といい、その単位面積当たりの力を『せん断応力』といい、以下の様に定義されます。
\[\tau=\frac{F}{A} [Pa (N/m^2)]\]
\[\tau:垂直応力 [Pa (N/m^2)]\]
\[F:荷重 [N] A:断面積 [m^2]\]

共役せん断応力
前図のせん断応力が生じている部材から下図のような微小体を取り出し、応力の作用状態を調べてみましょう。
前図での応力状態を反映させると真ん中の図の様になりますが、これだと力のつりあいは成立していますが、モーメントのつりあいが成立していないことが分かるでしょうか?(このままだと、微小体は時計回りにくるくると回転してしまう)。
よって右図のようにAD、BCにも応力\(\acute{\tau}\)が作用している必要があります。
\(\tau\)と\(\acute{\tau}\)の関係を調べるためにモーメントのつりあい式を立てると次のようになります。
\[{\tau}ab={\acute{\tau}}ab\]
\[\tau=\acute{\tau}\]
せん断応力にはお互いに直交する2面で同一の大きさのものが相向き合うか離れ合うかの状態で共存するという特性があり、これを『共役せん断応力』といいます。

練習問題
問題
下図のような壁に段付き円柱部材が固定されている状態を考える。ここで、A,Bの位置でそれぞれ荷重\(F_A,F_B\)が作用するとき、部材A,Bに生じる応力\(\sigma_A,\sigma_B\)を求めなさい。ただし、\(l_A=200[mm],l_B=100[mm],d_A=40[mm],\)\(d_B=60[mm],F_A=35[kN],R=60[kN]\)とする。

解答と解説
力のつりあい式を立てて、\(F_B\)の大きさを求めると、
\[F_A+F_B=R\]
\[F_B=R-F_A=300-200=25[kN]\]
ここで、各部材に作用する荷重の合計を考えると、
\[\begin{cases}{F_{OB}=F_A+F_B=60[kN]}&OB間(0\text{≦}x\text{≦}l_B) \\{F_{BA}=F_A=35[kN]}&BA間(l_B\text{≦}x\text{≦}l)\end{cases}\]
よって、求めたい\(\sigma_A,\sigma_B\)は、
\[\sigma_A=\frac{ 4F_{BA} }{ \pi{d_A}^2 }=\frac{4×35×10^3}{\pi×(40×10^{-3})^2}=27.9[MPa]\]
\[\sigma_B=\frac{ 4F_{OB} }{ \pi{d_B}^2 }=\frac{4×60×10^3}{\pi×(60×10^{-3})^2}=21.2[MPa]\]
まとめ
今回は垂直応力とせん断応力について解説しました。
ここから急に新しい用語がたくさん登場するため一度で理解することは難しいと思います。
そういう時は記事の最初に戻って一つずつ学んでいって下さい。
次回は「垂直ひずみとせん断ひずみ」について解説していきます。
ここまで見ていただき、ありがとうございました!


コメント